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肥沃な黒い土をつくる「腐植」

地球上には、大きく分けて12種類の土があります。その中で農作物が豊かに育つ条件を満たした肥沃な土、すなわち「粘土と腐植に富み、窒素、リン、ミネラルなどの栄養素に過不足なく、保水性・排水性・通気性に優れる土」はごく僅かです。 世界で最も肥沃な土として有名なのは、チェルノーゼムと呼ばれる黒土。世界の3割がウクライナに集中しています。この土の黒さの正体は「腐植」という土壌中の有効成分で、数千年から1万年前かけて植物遺体が蓄積したものです。

日本の黒ぼく土

実はチェルノーゼムよりもさらに黒い土壌が日本にはあります。「黒ぼく土」と呼ばれる火山灰土です。腐植の量だけでいえは、チェルノーゼムの10倍。ただし日本の土壌は酸性に傾きやすいうえ、火山灰由来の黒ぼく土では植物がリン酸欠乏に陥りやすく、かつては農地として理想的な土壌ではありませんでした。日本の黒ぼく土の農地が大きく発展したのは、戦後、石灰肥料やリン酸肥料などが開発されてからです。

100年前の農業イノベーション

100年前に発明された化学肥料 ・農薬は、農業に革命を起こし人類を飢餓から救いました。その一方で、土中の腐植含有量は低下の一途をたどりました。1万年かけて培われた腐植は、農業の近代化によって約50パーセントが失われたといわれます。腐植の減少によって農作物の収量は減少し、農業の現場は危機的な状況に陥っています。さらには、地力を失った表土は容易に流れ出し、世界中のいたる所で砂漠化や水質汚染を加速させました。わずか1割ほどの肥沃な農地をめぐり、世界では争いが絶えません。
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